2005年夏準決勝 京都外大西(京都)−宇部商(山口)

京外西  100200304=10
宇部商  000023111= 8



05年夏の準決勝、京都外大西−宇部商の試合を振り返ってみたいと思います。この試合は両チームども打線を組み替えてきたのでした。 まず京都外大西(以後京都と表記)は怪我をして出られない背番号8の平林の代役として、今大会初めてスタメンに背番号18の上田が 起用されました。上田が1塁に入り、これまで1塁を守っていた背番号9の高原が中堅に、そして左腕対策として3番に寺本、5番に 南本、7番に左打者の五十川が下がるという打順を組んできました。一方宇部商は前日の日大三戦で4三振の大ブレーキだった工藤が 3番から8番に降格、そして豊田が8番から6番に、山野が6番から3番に打順が変わりました。

先攻は京都でした。宇部にとって先攻を取れなかったことは非常に痛かったと思います。そして、この試合は宇部本来の野球が出来て いなかったと思うのですが、そのすべての原因がこの1回表に現れていたのでした。まず先頭の高原の3塁ゴロを高橋が1塁に悪送球 してしまうのです。(記録は安打と高橋の失策)次の林の犠打を好永は無理して投げなくていいのに3塁に投げてしまってオールセー フ(記録は犠打野選)。さらに寺本に三遊間を破られるタイムリーを打たれて、1点を京都が先制するのでした。

ここまでの展開がものすごく早いんですよね。試合が始まってまだ数分しか経っていないのに、あっという間に先制をされてしまった 。宇部にとっては、今大会初めての後攻で初めて先制点を許す形となってしまったのです。これ以降好永は投球に苦戦し、球数が非常 に多くなっていくのでした。

さらに宇部のリズムを崩すきっかけとなるプレイがこの後にあったのです。西下は三振だったのでしたが、南本の時なんと林と寺本が ダブルスチールを敢行したのです。左腕である好永のスキをつく見事な作戦でした。結局南本・上田を連続三振にしとめ、1回表の京 都の得点を1点に抑えたのですが、この後の展開を考えるとなにか1点以上のダメージを好永に与えたと思いますね。

1回にチャンスを逃した宇部商は3回にもチャンスを作ります。星山と上村のヒットで1死1・3塁のチャンスを作るとなんとここで 京都は投手交代。北岡に代わって本田がマウンドに上がることになったのです。樟南戦に続く3回途中からのマウンド、このピンチを 山野・好永を連続三振にしとめ序盤は1−0京都のリードで4回に入っていくのでした。今考えるとまだ北岡を交代させなくてもよか ったかもしれませんね。ただ、この本田の力投が4回表の攻撃に繋がっていっただけに難しいところではあります。

2回、3回と3者凡退に抑えられていた京都ですが、先頭の西下が死球で出ると南本の犠打の後6番上田が三遊間を破るタイムリー。 これで2点目が入ってしまうのです。好永は動揺したのか2塁への牽制球(上田は投球間に2塁に進んでいた)が大きくそれ上田を3 塁にやってしまいました。さらに2死満塁で高原のタイムリー、左翼井田の好返球で2塁走者の薮内を刺したので、この回は2点で済 んだのですが、好永のスタミナが限界に来ていたのを感じた回でありました。本来の好永ではない、もうだめかもしれないと思いまし たね。

このまま一方的にやられてしまうのではと思ったのですが、京都の2番手本田のスタミナもなくなりつつあったのでした。その本田か ら5回裏宇部は井田のヒットに上村の死球で2死1・2塁とすると3番山野が左中間を破る2点タイムリーを放つのでした。惜しくも 山野は3塁でアウトになってしまったのですが、後半に希望の持てる2点となったのでした。ここまで3−2。

6回表1死1・2塁のピンチをダブルプレーでしのいだ宇部はその裏好永のヒット、江本の四球、豊田のヒットで無死満塁のチャンス を作ると高橋が2塁ゴロ、これを西下が2塁に投げそして遊撃の薮内が1塁に投げたのですがこれが大きくそれてしまい2点が入りま す。これは京都のまず1つ目のミスです。ここはよくわからないんですよねぇ・・・。京都は前進守備を敷いていたのですから西下は ホームに投げなければならなかった。それなのに2塁に投げてしまったのには疑問が残ります。あれをホームに投げていたらここの2 点はなかったと思います。あとよく考えたら、高橋はラッキーボーイでしたね。日大三戦でも高橋の内野ゴロが相手の失策に繋がった のでしたから。その後のチャンスで井田がタイムリーを放ちもう1点、計3点がこの回に入ったのでした。ただ、宇部にとっては3点 しか取れなかったと言っていいと思う点が2つ。1死1・2塁で星山が犠打を敢行するのですが失敗してしまうのです。僕は3回にヒ ットを打っていた星山でしたから、ここは打たせるべきだったと思いますね。結果論で言っているわけではありません。消極的な作戦 だったと思います。も一つ、その後のチャンスで上村は三振を喫してしまうのですが、上村は5回の死球の影響で足を引きずりながら の打撃だったんですよ。だから、走れないということでこの打席は長打狙いの大振りだったんですね。そういう意味でその後の打撃に 影響を及ぼすことになった5回の死球は非常に痛かったです。


逆転を許した京都でしたが、7回再び好永に襲い掛かります。1死から林、寺本のヒットで1・2塁とすると続く西下に四球を与えて しまい満塁のピンチを作ってしまうのです。宇部にとって痛かったのはこの不調の西下を抑えることが出来なかったこと。西下は打撃 不調だったのですが、この試合四死球で2回、微妙なヒットで1回、計3回出塁しこれがすべて得点に絡むことになったのでした。続 く南本のタイムリーで1点、ただし4回同様井田の好返球で2塁走者の寺本を刺しなんとか同点を防いだのでした。しかし好永が踏ん 張れず、続く上田にセンターオーバーの2点タイムリー2ベースを打たれまた京都が逆転に成功するのでした。

逆転に成功した京都でしたが、その裏宇部にスキを与えてしまいます。先頭の山野を四球で出すといきなり盗塁、これが南本の悪送球 を誘い一気に3塁に進みます。このチャンスに江本がタイムリー、すぐに同点に追いついたのでした。

8回表の京都は薮内の死球をきっかけに2死2塁とすると、ここで三原監督は勝負に出ます。林に代えてなんと平林が代打で登場した のです。7回にヒットを打った林なので、今考えたらなんで?って思う代打ですよね。考えられるとしたら、8回2死からの代打と言 えば関西戦の8回と同じでその時も林に代えての代打でした。あの時はそれが成功したので、もう一度それに賭けたということでしょ うか?あるいは怪我した平林を代打に送って球場の雰囲気を変えようと思った(智弁対決での松山くんの時のような感じ)のかもしれ ません。寺本が当たっているので仮に抑えられたとしても9回に点を取れると言う計算が三原監督の頭の中にあったのでしょう。結局 平林は右翼飛でこの回得点は入りませんでした。

その裏宇部は8番降格の工藤がいきなり2塁打を放ちます。ここで星山が打席に向かうのですが、ここも星山は犠打でした。うーん、 打たせてもよかったんじゃないかなあと思いますね。1死3塁となって、井田は敬遠。続く上村、足を痛めていたのですが初球をフル スイングし打球はライトへ、代わった中川がホームに懸命に投げたのですが及ばす上村の犠飛で宇部が逆転に成功いたしました。これ で、この1点を守りきれば宇部は勝てるとそう思ったのですがね・・・。

9回表京都は先頭の寺本が2塁打、続く西下の当たりは2塁後方のフライとなったのですがなんと山野が取れずに無死1・3塁となっ てしまったのです。本来ならば取れていたあたりでした。1回に高橋が失策をしてしまった影響で、他の選手の守りもどこかいつもと 違うギクシャクしたものとなってしまったのです。それが次最悪な形となって現れてしまったのでした。南本の投ゴロ、取った好永は 飛び出した3塁走者の寺本を刺そうと3塁に追い込むのですが、3塁まで到達していた2塁走者の西下が絶妙なタイミングで逆走した ため、寺本を刺すことが出来ませんでした。ここで好永は西下を刺すことを考えればよかったのでしたが、1・2塁間で突っ立ってい た打者の南本を刺そうと1塁に投げこれが大きく逸れてしまったのです。結局このプレーで2点が入り打者の南本は3塁へ、僕には何 がなんだかわからなかったですね。呆然の一言ですよ。さらに上田にタイムリーを打たれて9−7。五十川の犠打で1死2塁となり打 者は薮内。このあたりからは勝敗よりもとにかく最後まで投げて欲しいという祈り、ここからは涙なくしては語れない展開になってい きます。薮内の時に守備妨害が起こって2死となったのですが、本田にヒットで繋がれ高原にとどめのタイムリーを打たれとうとう10 点目が入ってしまったのでした。さらに中川に死球を与えたのですが、寺本をなんとか打ち取りこの回は計4点で終了します。好永の スタミナはもう限界の限界まで来てしまっていました。コントロールのいい好永なのですがなんと死球を5つも与えてしまったんです よ。

絶望的な3点差となってしまったのですが、その裏宇部は粘ります。大きな拍手に送られて打席に入った好永が四球で出塁すると、続 く江本がヒットで繋ぎます。ここで豊田に代えて春はレギュラーだった添が打席に入ります。このシーンが翌年の宇部商の卒業式の答 辞の中に出てきたんですよ。しかし本田の速球に手が出ず三振を喫してしまうのですが、続く高橋のヒットで好永かかえり1点を返し ます。1年生の高橋が打ったので、ベンチは盛り上がりましたね。もしかすると逆転できるかもという希望が生まれたヒットだったん ですよ。しかし、続く工藤は右翼飛、星山は中堅飛に打ち取られ反撃はここまで。結局10−8で京都外大西が宇部商を下し京都勢7年 ぶりの決勝進出となったのでした。


この年のベスト4に入った4校にはそれぞれ思いいれがあったので、どこのチームにも優勝させてあげたかったんですよね。ただ準決 勝のこの組み合わせは最悪だったと思います。やっぱり、駒大苫小牧と大阪桐蔭の対戦は決勝で見たかった対戦でありましたからね。 それにこの4チームの中で一番思いいれの強かった宇部商には一番弱かった京都外大西ではなく、大阪桐蔭か駒大苫小牧と対戦して欲 しいと思っていましたから。